緑内障について
こんな症状ありませんか?
- 視界の端がぼやける、または見えなくなる
- 視野の一部が欠けている
- 視力の低下
- 夜間や薄暗い場所で視力が低下する
- 目の奥が痛む感じがすることがある
- 明るい光や光源の周りに光の輪が見える
- 頭痛とともに吐き気を感じることがある
- 物が二重に見える
- 視野の中に影や暗い部分がある
緑内障とは?
緑内障とは、眼圧などの影響によって機能的、器質的な視覚障害を引き起こす疾患です。
主に視野障害をきたしますが、急性緑内障以外は自覚症状の少ない病気のため、初期には気付かない場合があります。
視神経に障害が起こり、徐々に視野が狭くなる病気で、治療が遅れると重篤な視野障害に至ります。
※眼圧とは
簡単に言えば、眼球の固さのことで、視神経が圧迫され視神経の障害を引き起こします。眼圧は、房水という眼球内の水のつくられる量と出て行く量のバランスによって保たれていますが、房水の出て行く排水口である隅角の機能が悪化すると眼圧が上昇します。
!早期発見が大切です
緑内障は進行性の疾患であり、一度障害を負った視神経を元に戻すことはできないため、早期発見と治療が重要です。
急激に眼圧が上昇する急性緑内障では、頭痛や目の痛み、吐き気などの激しい症状が見られます。この場合、すぐに眼圧を下げる治療を行う必要があります。
特に40歳以上の方や、家族歴がある方は、定期的な眼科検診を受けることをお勧めします。
緑内障の種類
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1.開放隅角緑内障
最も一般的なタイプの緑内障で、視神経に徐々にダメージを与え、視力を低下させる進行性の疾患です。ゆっくり進行する場合が多く、初期には自覚症状がありません。眼圧が上昇することが主な原因とされていますが、眼圧が正常範囲内であっても発症することがあります。
- 原因
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開放隅角緑内障の主な原因は、眼球内の液体(房水)が正常に排出されず、眼圧が上昇することです。これにより、視神経が圧迫されて損傷を受けます。
- 遺伝的要因
家族に緑内障の既往歴がある場合、リスクが高まります。 - 年齢
40歳以上の人に多く見られます。 - 他の疾患
糖尿病、高血圧、心血管疾患などがリスクを増加させることがあります。
- 遺伝的要因
- 症状
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開放隅角緑内障は初期には症状がほとんど現れないため、「サイレント・シーフ」とも呼ばれます。進行すると以下のような症状が現れます。
- 視野の狭まり
特に周辺視野が徐々に狭くなります。 - 視力の低下
視力が徐々に低下し、視界がぼやけることがあります。 - 視覚的異常
視界に暗点(スコトーマ)が現れることがあります。
- 視野の狭まり
- 診断
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開放隅角緑内障の診断には、問診のほか、以下の検査等が行われます。
- 眼圧測定
開放隅角緑内障の診断における基本的な検査です。眼球内の圧力(眼圧)を測定することで、緑内障のリスクを評価します。 - 視野検査
緑内障による視野の欠損や狭窄の有無を評価するために行われます。緑内障の進行に伴い、視野が欠けたり狭くなったりするため、視野の広さを測定することは重要です。 - 隅角検査
隅角(ぐうかく)とは、眼球内の液体(房水)が排出される部分のことです。隅角検査は、隅角の開き具合を観察する検査で、緑内障のタイプを特定するために行われます。 - 眼底検査
眼底検査では、視神経乳頭の状態を観察して、緑内障による視神経の損傷や変形がないか確認します。視神経乳頭とは、視神経が網膜から眼球の外に出る部分です。 - 光干渉断層計【OCT】
網膜や視神経の詳細な断層画像を提供する検査です。この検査により、網膜神経線維層の厚さを測定し、緑内障の進行状況を評価します。 - 角膜厚測定
角膜の厚さを測定する検査です。角膜が薄いと、眼圧が正確に測定できないことがあり、緑内障のリスクも高まります。 - 屈折検査
屈折検査では、近視や遠視、乱視などの屈折異常がないか確認します。屈折異常の程度が緑内障の進行に影響することがあるため、この検査も重要です。
- 眼圧測定
- 治療
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開放隅角緑内障の治療方法は、初期の場合は点眼治療、進行している場合や眼圧コントロール不良の場合は手術と点眼を併用します。主な治療法は以下の通りです。
- 薬物療法
点眼薬や内服薬で眼圧を下げます。 - レーザー治療
レーザーを使って房水の流出を促進します。 - 手術
房水の流出を改善するための手術が行われることがあります。
- 薬物療法
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2.閉塞隅角緑内障
眼の前房隅角が急に狭くなり、房水の流出が阻害されることで急激に眼圧が上昇する緑内障です。これにより、視神経が急速に損傷を受ける可能性があります。開放隅角緑内障とは異なり、急性発作を伴うことが多いです。
- 原因
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閉塞隅角緑内障は、眼内の房水(眼の内部を満たしている液体)の流出が阻害されることで眼圧が急激に上昇し、視神経にダメージを与える病気です。主な原因は次の通りです。
- 前房(角膜と虹彩の間にある部分)が浅い
前房の深さが浅い人は、房水の流出路が簡単に閉塞されやすくなります。 - 瞳孔の拡張
暗い場所や薬物による瞳孔の拡張が、房水の流出を妨げることがあります。 - 高齢
年齢とともに水晶体が肥厚し、前房隅角が狭くなることがあります。 - 遺伝的要因
家族に閉塞隅角緑内障の既往がある場合、リスクが高まります。
- 前房(角膜と虹彩の間にある部分)が浅い
- 症状
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閉塞隅角緑内障は急性発作を引き起こすことがあり、以下の症状が突然現れます。
- 激しい眼痛
目の奥や周囲に強い痛みが生じます。 - 頭痛
眼痛とともに激しい頭痛が発生することがあります。 - 視力の急激な低下
視力が急激に低下し、ぼやけることがあります。 - 虹視
光源の周囲に虹のような輪が見えることがあります。 - 悪心・嘔吐
眼痛や頭痛に伴って吐き気や嘔吐が起こることがあります。 - 目の充血
目が赤く充血することがあります。
- 激しい眼痛
- 診断
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開放隅角緑内障の診断には、問診のほか、以下の検査等が行われます。
- 眼圧測定
眼圧測定は、緑内障の診断において基本的な検査です。閉塞隅角緑内障の場合、眼圧が急激に上昇していることが多いため、眼圧の測定は非常に重要です。 - 隅角検査【ゴニオスコピー】
隅角検査では、隅角の状態(開いているか、閉じているか)を評価します。閉塞隅角緑内障の場合、隅角が狭くなっているか、完全に閉塞していることがあります。 - 視野検査
緑内障が進行すると、視野が狭くなることがあります。視野検査を行い、視野欠損の有無や程度を評価します。閉塞隅角緑内障の場合、急性発作が起こると視野が急激に狭くなることがあります。 - 眼底検査
視神経乳頭の状態を観察するために、眼底検査が行われます。視神経乳頭の変化は、緑内障の進行度を示す指標となります。 - 前眼部深度検査
前眼部の深さを測定し、隅角が狭くなっている原因を評価します。眼球の超音波検査を用いて、前房の深さや角膜と虹彩の位置関係を確認します。閉塞隅角緑内障の患者では、前房が浅くなることがあります。 - 光干渉断層計【OCT】
網膜と視神経の詳細な断層画像を提供する検査です。視神経乳頭の損傷や網膜神経線維層の薄化を確認することで、緑内障の進行状況を評価します。 - 瞳孔反応検査
瞳孔の反応をチェックし、神経学的な障害がないかを確認します。瞳孔の反応が鈍くなっている場合や、瞳孔径の異常がある場合は、緑内障の疑いが強まります。
- 眼圧測定
- 治療
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開放隅角緑内障の治療は、すみやかに眼圧を下げることが目的で、場合によっては予防的にレーザーを施行する場合もあります。
- 薬物療法
点眼薬や内服薬で眼圧を下げます。 - レーザー虹彩切開術
レーザーを用いて虹彩に小さな穴を開け、房水の流出を改善します。 - 手術
薬物療法やレーザー治療が効果を示さない場合、手術が行われることがあります。
- 薬物療法
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3.正常眼圧緑内障
正常眼圧緑内障は、近年の緑内障患者さんの多くを占めます。
眼圧が正常範囲内であるにもかかわらず、視神経が損傷し、視野欠損が進行する緑内障の一種です。眼圧が高くないため、発見が遅れることが多く、特別な注意が必要です。- 原因
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正常眼圧緑内障の原因は完全には解明されていませんが、以下の要因が関与していると考えられています。
- 血流不全
視神経への血流が不十分であることが原因とされています。 - 視神経の脆弱性
一部の人では、視神経が通常の眼圧でも損傷を受けやすい場合があります。 - 遺伝的要因
家族に緑内障の既往歴がある場合、リスクが高まります。 - 血圧の変動
特に夜間の低血圧が視神経に影響を与えることがあります。
- 血流不全
- 症状
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正常眼圧緑内障の症状は、他の緑内障と同様に進行性で、次第に視野が狭くなります。初期段階では自覚症状がほとんどないため、気づきにくいことが特徴です。
- 視野欠損
視野が徐々に狭くなり、周辺視野から失われます(トンネルビジョン)。 - 視力の低下
力が低下し、ぼやけることがあります。 - 暗点(スコトーマ)
視野に暗い部分が現れることがあります。
- 視野欠損
- 診断
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正常眼圧緑内障の診断には、問診のほか、以下の検査等が行われます。
- 眼圧測定
眼圧測定は緑内障の基本的な検査ですが、正常眼圧緑内障では、眼圧が正常範囲内であるため、この検査だけで診断はできません。しかし、正常な眼圧であっても視神経が損傷している場合、正常眼圧緑内障の可能性が疑われます。 - 視野検査
野の欠損や視野狭窄の有無を調べるために行われます。正常眼圧緑内障では、視野の中心から周辺にかけて緩やかに進行する視野欠損が見られることが多いです。 - 眼底検査
視神経乳頭(ししんけいにゅうとう)の状態を観察するために、眼底検査が行われます。正常眼圧緑内障では、視神経乳頭の陥凹(かんおう)が進行し、視神経が損傷していることが多いです。 - 視野検査
野の欠損や視野狭窄の有無を調べるために行われます。正常眼圧緑内障では、視野の中心から周辺にかけて緩やかに進行する視野欠損が見られることが多いです。 - 光干渉断層計【OCT】網膜と視神経の詳細な断層画像を提供する検査です。正常眼圧緑内障では、網膜神経線維層が薄くなっていることが多く、この検査により網膜神経線維層の厚みを測定して、緑内障の進行状況を評価します。
- 隅角検査
隅角検査は、眼球内の隅角が開いているか閉じているかを確認するための検査です。正常眼圧緑内障では、隅角は開いている(開放隅角)ことが多いですが、この検査を行うことで他の緑内障タイプとの鑑別が可能になります。 - 角膜厚測定
膜の厚さを測定する検査です。角膜が薄いと眼圧が実際よりも低く測定されることがあるため、正常眼圧緑内障の診断には角膜の厚さを考慮することが重要です。 - 血流検査
正常眼圧緑内障は、視神経の血流の低下が原因の一つと考えられています。視神経乳頭血流の状態を評価するために、血流検査が行われることがあります。 - 眼底写真撮影
眼底写真を撮影して、視神経乳頭の変化を記録します。この写真は、緑内障の進行を長期間にわたって追跡するのに役立ちます。
- 眼圧測定
- 治療
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正常眼圧緑内障の治療は、主に視神経の保護と眼圧の低下を目的とした点眼治療がおこなわれます。
- 薬物療法
点眼薬で眼圧を下げることが主な治療法です。眼圧が正常範囲内であっても、さらに低下させることが有効とされています。 - レーザー治療
レーザーを使って房水の流出を促進します。 - 手術
薬物療法やレーザー治療が効果を示さない場合、手術が行われることがあります。
- 薬物療法
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4.続発緑内障・その他
続発緑内障は、何かの病気が元にあり、その影響で起こる緑内障です。ステロイド剤の使用、糖尿病、ぶどう膜炎などが原因になります。治療が困難な場合もありますが、それぞれの原因に対する治療も重要です。
- 原因
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続発緑内障の原因は多岐にわたります。
- 眼内炎症(ぶどう膜炎など)
炎症により房水の排出が阻害され、眼圧が上昇します。 - 眼外傷
外傷により房水の流出路が破壊され、眼圧が上昇します。 - ステロイド薬の使用
長期間のステロイド薬使用が眼圧を上昇させることがあります。 - 糖尿病性網膜症
新生血管が房水の排出を妨げることがあります。 - 角膜内皮障害(フックス角膜内皮ジストロフィーなど)
房水の排出が不十分になることがあります。 - 血管疾患(網膜静脈閉塞症など)
血管の異常が原因で眼圧が上昇します。
- 眼内炎症(ぶどう膜炎など)
- 症状
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続発緑内障の症状は原因によって異なりますが、一般的な症状には以下のものがあります。
- 視力の低下
視力が徐々に低下します。 - 視野欠損
視野の一部が欠けることがあります。 - 眼痛
特に急性の場合、強い眼痛を感じることがあります。 - 充血
目が赤く充血することがあります。 - 頭痛
眼痛とともに頭痛を感じることがあります。 - 虹視
光源の周りに虹のような輪が見えることがあります。
- 視力の低下
- 診断
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正常眼圧緑内障の診断には、問診のほか、以下の検査等が行われます。
- 眼圧測定
眼圧測定は、続発緑内障の診断において基本的な検査です。続発緑内障では、眼圧が上昇することが一般的ですが、正常眼圧緑内障のように眼圧が正常範囲であっても視神経が損傷している場合があります。眼圧が高い場合は、続発緑内障の可能性が高まります。 - 隅角検査
隅角検査は、眼球内の隅角(房水の排出路)の開閉状態を観察する検査です。続発性開放隅角緑内障と続発性閉塞隅角緑内障を区別するために行われます。 - 視野検査
視野検査は、視野の欠損や視野狭窄の有無を調べるための検査です。続発緑内障では、視野欠損のパターンが異なる場合があり、これが続発性であることを示唆する場合もあります。 - 眼底検査
続発緑内障では、特定の病態(例:ぶどう膜炎に伴う緑内障、網膜剥離後の緑内障など)に関連した特徴的な眼底所見が見られることがあります。 - 光干渉断層計【OCT】
続発緑内障では、網膜神経線維層(RNFL)が薄くなっている場合が多く、この検査で網膜神経線維層の厚みを測定して、緑内障の進行状況を評価します。 - 超音波生体顕微鏡検査
前眼部の詳細な構造を観察するための超音波検査で、特に続発性閉塞隅角緑内障の原因が虹彩や毛様体、前房の異常に関連している場合に有用です。 - 血液検査
ぶどう膜炎や自己免疫疾患、感染症など、続発緑内障の原因となる全身疾患を評価するために血液検査が行われることがあります。
- 眼圧測定
- 治療
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続発緑内障の治療は、原因となる疾患や状態に依存します。一般的な治療方法には以下があります。
- 薬物療法
点眼薬や内服薬で眼圧を下げます。 - レーザー治療
房水の流出を促進するためのレーザー治療を行います。 - 手術
房水の流出を改善するための手術を行います(例:トラベクレクトミー)。 - 原因疾患の治療
続発緑内障の原因となる疾患(例:ぶどう膜炎や糖尿病性網膜症)の治療を行います。
- 薬物療法
予防
- 定期的な眼科検診
緑内障は初期には自覚症状がほとんどないため、定期的な眼科検診を受けることが予防の第一歩です。特に、40歳以上の方、緑内障の家族歴がある方、強度の近視の方、糖尿病や高血圧などの全身疾患を持つ方には、年に1回の眼科検診が推奨されます。 - 健康的な生活習慣を維持する
適度な運動や禁煙、ストレスの管理などの生活習慣の改善を行うことで、眼圧を適切に管理することが可能です。 - 食生活の改善
バランスの取れた食事、特にビタミンA、C、Eや亜鉛、オメガ-3脂肪酸などを含む食事を心がけましょう。 - リスク因子の管理
糖尿病や高血圧の管理を徹底します。
緑内障の治療について
(1)薬による治療
急性緑内障の治療では手術が第一選択ですが、慢性緑内障で視野障害が進行していない場合はまず薬による治療から始めます。
緑内障治療薬は大きく分けて5種類あり、緑内障のタイプ、眼圧の高さ、視野異常の重症度などにあわせて処方されます。
- 房水の産生を抑制する薬
- 隅角での房水流出を促す薬
- 隅角以外からの房水流出を増やす薬
- 瞳孔を縮めて隅角を広げる薬
- 循環を改善し視神経の働きを助ける薬
(2)レーザー治療
薬では眼圧が下がらない場合などに行います。レーザー光をあてて、隅角から房水が流れやすくする治療法です。外来で短時間のうちに、侵襲が少なく行うことができます。レーザー虹彩切開術、レーザー線維柱帯形成術などがあります。
(3)手術治療
薬では眼圧が下がらなかったり、視野障害の進行が止まらない場合には、手術治療が適応になります。
房水の流出経路を新たに設けることを目的とした手術で、線維柱帯切除術、非穿孔線維柱帯切除術、線維柱帯切開術などがあります。
どれも局所麻酔が可能で、手術時間は30分程度です。
また、白内障を併発している場合でも、白内障と緑内障の同時手術が可能です。